ホピの予言と日本人

 合衆国アリゾナ州北部に、アメリカ最古の先住民といわれるホピ族がいる。彼らは、優に五万年の歴史を口伝で伝承している。
 彼らが一万年前から先祖代々語り継いできた予言によると、現在のこの世界は、地上に現れた四番目の世界だという。前にあった三つの世界は、人類が創造主への感謝と汎神論の精神を忘れ、物質的欲望に取り憑かれ、世界を目茶目茶にしてしまったため、怒りを覚えた創造主たちの手により滅ぼされたという。太霊によるこの世界の浄化のたびに、汎神論の精神を決して失わなかったごく少数の忠実な者達だけが浄化を生き延び、次世界に命を繋いでいった、という。ホピ族は、そのような創造主の選民の子孫を自認しており、先祖伝来の「生命の道」を今に至るも尊守しているのである。
 今から約一万年前、彼らの祖先が第三の世界を滅ぼした大洪水を逃れ、今の第四の世界、中央アメリカの西岸に漂着したとき、彼らの守護神である太霊マサウは、第四の世界を生き抜くための教えと予言をすべて刻みつけた「石板」を彼らに手渡した。石板は二人の兄弟の間で二つに分けられ、黒い髪で肌の白い兄の方は遠く日出ずる方向に向かって旅立ち、弟がのちのホピ族の指導者となった。
 その石板に記された第四の世界に関する予言はこうである。
 やがて第四の世界も人類に邪心が蔓延することによって滅亡する時がくる。その日は「大いなる清めの日」と呼ばれる。その日に先立ち幾つもの兆候が現れる。幾つか列挙すると、
○馬以外のものが引く数珠繋ぎになった馬車を、白人が発明するだろう。
○空に道ができるだろう。
○空中にクモの巣が張り巡らされるだろう。
 長い間、これらの兆候は現れなかったが、やがて鉄道ができ、航空路ができ、電話線が張り巡らされ、そしてハイウェイが出現したとき、彼らは初めて予言の真意を読み取った。 しかし、このような兆候が現れてもホピの長老たちは声を発することなく、口を固く閉ざしていた。
 ところが、事態は一変する。1945年8月、広島と長崎に原子爆弾が投下され、数十万人の命を一瞬にして奪い去ったとき、ホピ族の指導者達は、これ以上黙っていられなくなったのである。
 それは、「灰のつまったひょうたん」が、空から落ちてくる、というホピの予言が現実になった時だったからだ。このひょうたんは、とてつもない破壊力を持ち、川を煮えたぎらせ、不治の奇病を引き起こし、大地を焼き尽くし、長いこと生命を育たなくさせてしまうのだ。
 ホピの予言では、その灰の詰まったひょうたんは、母なる大地の心臓を掘り出して作られるとなっていた。彼らは、地下鉱石などを母なる大地の内臓と考えている。中でもウランは心臓に例えられる(ウランは雷を呼び、不毛の大地に雨を授けてくれるものとされている)。日本に落とされた原爆の原料となったウランは、彼らの居留地から、合衆国が、ホピの反対を押し切って掘り出したものだったのだ。
 この原爆投下によって、予言にある「大いなる清めの日」が、確実に近づいていることを悟ったホピの長老たちは、最後の兆候が現実化してしまわないうちに、ホピに伝わる「生命の道」を全人類に示し、人間本来の生き方に戻るよう呼びかけることを決定し、国連に特使を派遣したのである。
 ホピの予言では、この大粛清が起きる最後の前兆は、白人が「空の家」を天に置く時だという。そのとき、母なる地球は人類の浄化に入る。空の家は、人類に許された最後の創造物であり、その完成前に人類が生き方を変え始めなければ、ほんのわずかな人間を残して、第四の世界は淘汰されるという。
 現在宇宙では、国際宇宙ステーションが建設されている。完成は2011年秋になるという。
 さらに、大いなる清めの日が近づいたときに「失われた白き兄」が欠けた石板を持って戻り、世界を邪悪から清め、平和に導き入れる、という予言もある。
 ホピの予言について著作活動をしているフランク・ウォーターズによれば「白き兄とともに二人の従者が到来する。一人はまんじと十字のマークを持ち、もう一人は太陽の印を持っている。この3人が世界に大変動をもたらし、生命の道を固守し続けたわずかな数のホピ族の生き残りとともに新しい平和な世界を現出させる。だが、この3人が使命を全うできない場合には、太霊は西から『ある者』を興す。それは非常に多くの冷酷な民である。彼は大地を破壊し、地上に生き残るのは蟻だけとなる」 という。
 予言の解釈には諸説あるが、何人かの解釈者は、まんじとはドイツ(ナチスは逆まんじをシンボルにした)のことであり、太陽の印は日本(日の丸の旗から)のことだと確信している。十字の印はカトリックの総本山があるイタリア(ヴァチカン)ということになるのだろうか?
 もしこの解釈が正しければ、先の大戦被爆国となり、いわば世界平和を実現する役目を担った日本は、かつての同盟国であるイタリアとドイツとともにホピ族とよい協力関係を持ち、人類のために貢献しなければならない重大な使命を担っていることになるのだろう。
 ならば、日本とドイツとイタリアが世界にもたらす大変動とは何だろう。今回、日本は「自爆」というかたちで三度目の被爆を経験した。その影響は、全世界に及ぼうとしている。私たち日本人が、世界平和や地球環境保護などに対して、大きな使命を担っているとするなら、この三度の被爆経験を決して無駄にしてはならない。「私たちの経験(犠牲)を、決して無駄にしないでください」と世界に呼びかける権利と義務の両方を有するだろう。
 日本がこうした使命を全うできない場合に、西から勃興する非常に多くの冷酷な民とは何だろう。今、日本は徹底的に打ちのめされていることは確かだ。その弱みにつけ込もうとする動きは、きっとあるに違いない。私たちはそれにどう向き合えばいいのだろうか。これは、人類全体の未来を左右する重要な態度決定だ。


 この絵は、ホピの聖地オライビ近くの岩に描かれた有名な「ロードプラン」である。左下の人物は、太霊マサウを表す。右手にはたいまつ、左手には、数千年前、ホピが地上に出るのに通った「アシ」を握っている。アシの右に見える円は第四の周期を示している。長方形は地上世界への脱出口「シパプ」で、そこから伸びる上の線は、多くの人が従う物質的な道を示す。手をつないでいるのは、彼らが物質的な生き方で結束していることを表し、波線の示す「混沌」がその結末である。ホピが従うように命じられている道が、下線に示されている。それは伝統派の歩む狭い道で、トウモロコシ畑に立つ長老で終わっている。彼は、伝統に忠実な者たちに約束されている平和と繁栄の象徴だ。
 この線沿いに、三つの円と縦線が見える。三つの円は予言された世界大戦で、最初の二つはすでに終わり、最後の一つはまだ来ていない。最初の二つの円に続いて、上下の線を結ぶ縦線がある。それは誘惑にはまって進歩派になり、古来の信仰を捨てる人々の離反を予言している。それが三つ目の円の前に来ていることに注目したい。
 さらに、物質的な生き方の果てに訪れる「混沌」(波線で示される道)は、長老の頭をかすめるように終っている。これも、人類に待ち受ける未来を象徴しているのだろうか。