祈りの唱

蒼ざめた僕らの目の前に 巨大な焚き火が燃えている
薪のはぜる音が けたたましく木霊し
噴き上がる煙が 夜空に広がって
やがて火の粉も煙も 大気と混ざり合う
見上げれば 満天の星
誰かが言った 星とは 空に開いた穴だと
その穴の向こうは 光の世界

焚き火の火は 僕らの闇を明るく照らしたかに見える
しかし この火で 暖をとることはできない
この静けさは 祭りの後? 嵐の前?
闇を見詰め 身を震わせ 涙に濡れて
あなたの名を呼ぶ子どもたち
誰かが言った ここにひとつだけ足りないもの
それは 焚き火の向こうの あなた

怖れが闇を深くし 僕らを盲目にし
自分の足で立つ力さえ奪い取ろうとしている
誰もが答えを求めている
これ以上の問いは もういらない

目を閉じると あなたのいるべき場所に 橋がかかる
その橋の向こうには 重く閉ざされた扉がある
僕は橋を渡り 扉を叩く 何度も何度も 叩く

すべてが消え去った後に
たったひとつ残るもの
それは あなたの名前

祈りとともに 唱えられる
あなたの名前・・・