震災後雑感

 反原発の気骨ある論客、京都大学原子炉実験所助教小出裕章氏が、23日、参議院行政監視委員会参考人として呼ばれ、話をしている様子をYouTubeで見た。
http://www.youtube.com/watch?v=8WNFcNOkzIY&feature=related

 その話の最後に、小出氏はガンジーの言葉を引用していた。
 ガンジーの墓の碑文には、「7つの社会的大罪」として、こう書いてあるそうだ。

1.理念なき政治(Politics without Principles)
2.労働なき富(Wealth without Work)
3.良心なき快楽(Pleasure without Conscience)
4.人格なき学識(Knowledge without Character)
5.道徳なき商業(Commerce without Morality)
6.人間性なき科学(Science without Humanity)
7.献身なき信仰(Worship without Sacrifice)

 3.12に、政府が原子炉への海水注入を「止めろ」と言ったとか言わないとかの応酬があったが、国を運営したり緊急事態に対処したりする立場の人間たちの、そうしたドタバタ具合を見聞きするにつけ、「理念なき政治」に守られた人格なき学識経験者たちが人間性なき科学を実践し、その裏付けのもとに行われた道徳なき商業が労働なき富を生み出し、同時に今回の事故をも生み出し、さらにその規模をむやみに大きくしていると思えてならない。
 私たち国民は、それに対して有効な自衛手段を持ち得るのだろうか。そもそも自分たちを護ってくれるはずの国家から、自分たちを自衛しなければならないとは、それ自体がすでに緊急事態である。「在フランスNPO団体・ACRO/市民の放射能測定団体」からの「国に殺されない方法を、遠方から支援しています」というメッセージが重くのしかかってくる。

 前出の参議院行政監視委員会に同じく参考人として呼ばれたソフトバンク社長・孫正義氏の発言から、気になるものを二つばかり挙げておく。

「政府が発表している放射線の測定数値はγ線の線量だけである。本当に怖い内部被爆に関係するα線β線の線量は発表されていない。自分が携帯している線量計はすべての線量を測れるタイプだが、それで測ると、政府発表のほぼ倍の数値が出る。すべての線量が測れるタイプの線量計原発事故以来、税関で500台止められたままになっている」

風力発電における環境アセスメントでは3年間調査が行われているが、突破すべき最後の関門(門番役)は、何と原子力安全・保安院がすることになっているという。なぜ風力のアセスメントに原子力の関係機関が顔を出すのか? 代替エネルギーの開発を遅らせよう遅らせようと画策しているとしか思えない」

 同じく同会に参考人として呼ばれた神戸大学名誉教授の石橋克彦氏(地震学)の発言。これは同氏が日ごろから言っていることだろうが、この地震大国の日本で、大都市への一極集中はあまりにもリスクが高すぎるので、分散すべきだということ。
 私も東京の人口を減らすべきだと一貫して主張してきた。緊急時のリスク軽減の立場からも、省エネの観点からも、あるいは公害などの弊害を減らし、国全体の生産性を高める意味からも、特定の都市にあらゆるものが集中しすぎているのは、「良心なき快楽」のためであり、まったく道理に合わない。
 過密な都市部から人をあぶり出すために、都市部の住民税や地方税などを割高にし、逆に地方の過疎地の税金を安くするなどの税制措置も、今後必要になってくるのではないかと思う。ただし、地方をもっと安全で住みやすく魅力的な場所にする努力も同時に行っていく必要があることを付け加えておきたい。